
今回紹介するのは歌野晶午の「葉桜の季節に君を想うということ」。普段、ネット検索で読む本を探していたが、どのランキングを見ても同じような本ばかり出てくるので、趣向を変えてYouTubeで検索し、コメントに「記憶を消して読み返したいほどの作品」との言葉に引かれてすぐに購入した。
ストーリーは、「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎がいつものようにフィットネスクラブで汗を流していると、後輩の芹澤清から彼が密かに想いを寄せる久高愛子の相談に乗ってほしいと頼まれる。愛子はひき逃げで亡くなった身内が、悪徳商法業者・蓬莱倶楽部によって保険金詐欺に巻き込まれて殺されたと考えたが、家柄の手前警察には相談しにくいので、成瀬に証拠を掴んで欲しいと依頼してきた。同じ時期、成瀬は地下鉄に飛び込もうとした麻宮さくらという女性を助ける。それがきっかけとなり、以後何度かデートを重ねる仲になる。保険金詐欺事件の真相究明と成瀬の恋の行方、2つの出来事がやがて交錯する。
淡々とストーリーが展開するのが好きな筆者にとっては、描写が細かい本作はなかなか読み進まなかったが、少しずつ読んできた。途中、成瀬や登場人物の過去の話が出たと思えば、再び本筋に戻る展開が続いたが、後半それぞれの物語が一つにつながっていく。また後半のある一文で頭の中のイメージが崩れ落ち、作者が仕掛けた巧妙な罠にハマっていたことに気付かされる。そしてずっと疑問に思っていたタイトルの意味も明らかになり、読み終わったあとはどこか活力がわいてくるような、そんな気分になる。(城)


