衝撃的な事件のニュースを伝える際、使い古された言い回しに「全米震撼」という言葉がある。先の米国大統領選立候補予定者のテレビ討論会。81歳のバイデン氏は声が小さく言葉に詰まり、不明瞭な発言を繰り返し、このなかなかの〝放送事故〟に、ある意味、全世界が震撼した。

 ニューヨークタイムズはその後、バイデン氏に選挙戦からの撤退を求める社説を掲載した。リベラルな同紙は民主党寄りの論調で知られるが、討論会のあまりのひどさに黙っていられなくなった。メディアとして正しい姿勢であろう。

 バイデン氏より3歳若いトランプ氏も、自身の不倫口止め料の業務記録改ざんなど4つの事件で起訴されており、どちらに転んでも米国、国際社会にとって危機が高まる。なぜ、この2人なのか…。

 英国はスナク首相の政権与党が下院総選挙で歴史的大敗を喫し、新首相に労働党党首のスターマー氏が就任した。労働党は欧州全体に広がる自国第一の右派ではなく、現実を見据えた政策を訴えての勝利。国内経済、社会保障の再建、外交では日米豪などとのインド・太平洋の連携強化に期待が膨らむ。

 フランス下院選ではウクライナ支援をリードするマクロン大統領の中道与党が敗れ、極右の流れをくむポピュリズム政党の国民連合が躍進した。マクロン氏は国民連合の政権奪取を阻止するため、与党連合と左派連合の統一戦線結成に動き出した。

 北朝鮮とロシアが軍事支援を想定した条約を結び、プーチン氏がウクライナへの派兵を求めたという情報も。日独伊が世界に挑み、叩きのめされた歴史を繰り返さぬために、いまこそ米国が正気を取り戻さねばならない。(静)