人は自分にないものが他人にあると羨み、嫉妬してしまうものです。特に女性は、態度や行動で顕著に表れやすい。見た目、能力、円満さ…挙げればきりがありません。この本は、圧倒的美貌の妹を持ったことで比較され苦しむ姉、外見に恵まれなかったのでエリートへ登り詰めようとする同級生など、暗黙のうちに生み出された階級社会を生き抜くためもがく女性たちを描いた物語。上下巻あり、上巻は女子高を舞台に、渦巻く女の悪意と欺瞞があぶり出されています。
主人公の〝わたし〟は、スイス人の父と日本人の母との間に生まれたハーフ。1歳下に妹〝ユリコ〟がいるのですが、ユリコは整いすぎた美貌の持ち主でした。しかし、わたしは妹とは似ても似つかず、日本人的な凡庸な容姿。中学生のとき、父の会社が失敗し、ユリコは両親と一緒にスイスへ。比べられるのが嫌だったわたしは日本に残ります。
わたしは頑張って勉強し、名門女子高のQ高に入学。そこはまさに、容姿がものを言う階級社会の巣窟でした。そこでわたしは地味で平凡な容姿の同級生〝和恵〟と出会います。和恵はお嬢様が集まるQ高で勉強も部活も頑張ろうとしますが、わたしにはそんな和恵がみじめに見えて仕方なかった。
スイスでは父が自殺してしまい、ユリコは日本へ帰国。Q高の中等部に編入してきます。案の定ユリコは学校の注目の的に。和恵にも目を付けられてしまいます。
…といった感じで物語は進行。下巻では、大人になった彼女らが描かれます。和恵は大企業に入りエリート街道を走るも、夜は娼婦となり、やがて殺害されてしまいます。彼女らが辿る運命とは。(鞘)