先日、印南町島田に開設された訪問看護ステーション「Hull(はる)」を取材した。不登校や発達障害など、何らかの原因で社会生活に適応できなくなり、生きづらさを抱えた若者のゆるやかな社会復帰を応援する。訪問看護ステーションは介護や療養というイメージが強く、就労支援に特化というのは県内でも珍しいという。
はるは、若者の就労支援を行う法人の代表を務める峯上良平さんと、看護師の峯上晴菜さんの夫婦が立ち上げた。良平さんの法人は生きづらさを抱える若者が共同生活するシェアハウスを運営しており、田辺市を中心にみなべ、印南にも展開。知っている人が居ない新しい環境で再スタートを切ろうと、全国各地から若者が集まってくるそうだ。
峯上さん夫婦は、生きづらさが生まれる原因は、学生時代のつらい経験が足かせになっていることが多いと話していた。学生にとっては、学校の中が社会のすべてだ。クラスメイト、友達、部活の先輩後輩、先生。彼らの中の登場人物はこの関係性がすべて。その人たちにどう思われているのか神経をすり減らしながら毎日を送る中、無視されたり、軽蔑の言葉を投げられるのは、彼らの今後の人生を大きく左右してしまう。
学生時代につらい思い出が残れば、地元に愛着が消えてしまうのも当然の話かもしれない。峯上さん夫婦はその足かせをなるべく早く取り除いてあげたいと話す。そのためには、学校や職場に入って、発達障害やうつ病などについて理解してもらうことが大切と訴えていた。
誰がいつ、当事者になるか分からない。子どものうちにそういう理解を促すことも重要なのではと思った。(鞘)