日本の農業は人手不足が深刻で、和歌山県も外国人の力なくして現状を維持することは難しい。ベトナム人の技能実習生と受け入れ農家、監理団体の人らに話を聞いても、今後、技能実習から育成就労へと制度が大きく変わるうえで課題は多い。
実習生は慣れない異国で仕事をしながら言葉を覚え、買い物をするにはどこが安くて品揃えがいいか、食事をするにはどの店が安くておいしいかなど、生活に密着した情報を手に入れ、経験値を高めていく。3年もすればストレスなく意思疎通できるようになり、毎年入ってくる後輩にはたのもしい存在となるのだが、この地域の交通と買い物の不便さ、娯楽の少なさから少しずつ都会に目移りするようになり、何より賃金の格差が大きく、都会へ流れてしまうケースもある。
新たな育成就労制度は、批判の大きかった転職に関して要件が緩和され、外国人にはうれしい半面、和歌山の農家や監理団体には厳しい逆風が予想される。人間関係のトラブルはなくとも、肉体労働の彼らにすれば、いまより仕事が楽で賃金が高く、生活も便利な都会の他の業種へかわりたいと思うのは至極当たり前の反応であろう。
たとえば名田町の農家で働く外国人。免許はあっても車を買うほどの余裕はなく、買い物は休日に自転車で日高川を越えて行くが、雨の日や夜は危ない。イベント等で日本語を教えてくれるボランティアが見つかり、友達ができれば生活も楽しくなるのでは。
県や市町は、週末だけでも買い物の送迎バスを運行したり、公共交通の運賃を支援できないものか。為政者の票にならなくとも、日本一の花まる御坊、この国を支えてくれている彼らのために。(静)