学校や職場で生きづらさを抱える人が社会で自分らしく生きられる支援をと、印南町島田に先月、社会復帰や就労支援に特化した訪問看護ステーション「Hull(はる)」が開設された。不登校や発達障害などで社会生活に適応できなくなった人に対し、その人の状況に応じた伴走支援をすることで、段階的な社会復帰をサポートする。
はるは、自身も生きづらさを経験したという施設長の峯上(みねうえ)良平さん(35)、峯上さんの妻で看護師の晴菜さん(29)夫婦が開設。事務所は晴菜さんの実家の喫茶水平線の店舗下にある。良平さんは田辺市で若者の就労支援を行う法人を運営。晴菜さんは県立医科大附属病院で勤務後、精神科の訪問看護や児童発達支援に携わってきた。スタッフには、看護師4人、就労支援員3人、心理士1人がいる。
支援の対象は10~30代までで、利用には医師の指示書が必要。良平さんは「生きづらさの要因は学生時代のいじめやトラウマが多く、その後の社会生活に大きく影響していくんです」と話す。はるでは学生の段階から利用者と学校の間に入り、双方に専門的な支援・アプローチを行うことで、利用者の早い立ち直りを目指している。
大人へは本人の状況を十分にヒアリングした上で、訪問看護による治療や就労訓練など、その人に合わせたサービスを提供。就労は良平さんが運営する法人のプログラム(農業体験やリモートワークの就労訓練等)を利用することができ、実際に就職につながった人もいる。その後は利用者が継続して就労できるよう、企業側にその人の特性や接し方などを伝えていく。
「学校の先生や職場の上司は専門家ではないので、当事者にどういう配慮が必要なのか、対応が分からなくて当然なんです」と2人。発達障害の特徴、その人の特性を理解できれば、互いにしんどい思いをすることも少なくなる。2人は「ご本人とその家族、学校や職場が互いに苦しくならないような支援をしていきたいです」と話している。