由良町神谷のゆらふるさと伝承館(旧白崎中学校)に6日、鳥羽伏見の戦いで敗走してきた会津藩士から当時の由良の村民に贈られたとみられる甲冑が寄贈された。網代の濵野節子さん(85)宅で保管されていたもので、鎧や胸板、すね当てなどきれいな状態で残っており、会津藩士と由良の村民との絆を示す、貴重な資料となる。
鳥羽伏見の戦いは1868年に薩摩藩、長州藩、土佐藩などの新政府軍と京都見廻組や会津藩、新選組など旧幕府軍が現在の京都市南区などで戦い、新政府軍が勝利した。敗れた会津藩士たちは紀州藩を頼って和歌山に向かい、由良町誌によると、加太を経由し、1858人が由良町にたどり着いた。当時の阿戸や網代、横浜などの村民が傷ついた藩士らを介抱したとされ、網代や里の寺には藩士の墓も残っている。
濵野さんの祖先も藩士たちを受け入れ、お礼に甲冑が贈られたと言い伝えられており、2017年には町文化財保護審議会委員長を務めていた故大野治さんの調査も受けた。
寄贈した甲冑は鉄製で、兜や胸板、すね当て、こてなどすべてそろっているほか、扇子、甲胄を入れる箱もあり、長年箱の中で保管されてきた。胸板や箱に家紋のようなものもあるが、いまのところ所有者なども含め詳細はわかっておらず、今後調査を進めていく。
濵野さんは「家でずっと保管しておくより、多くの方に見ていただきたいと思いました」。この日は、会津藩士の子孫で子どものころ濵野さん宅をよく訪れていたという藤本良子さん(79)=江ノ駒=も同席し、「当時からこの甲胄があり、子どもたちが遊んでいましたが、こんな歴史的な意味があるものだったのですね」と話していた。
町はゆらふるさと伝承館に展示するとともに、県や会津若松市の学芸員らとともに詳細を調べていく。伝承館への入館希望者は由良町教委℡0738―65―1800へ。