大相撲の中継やニュースで「荒れる春場所」という言葉をよく耳にする。年6場所、幕内の全取組を見ているファンにすれば、どの場所も毎回、それなりに荒れていると思うが、尊富士が110年ぶりの新入幕優勝を飾った今年の春は本当にすごかった。
現在、進行中の夏場所はその興奮冷めやらぬなかで初日を迎え、2場所続けて15日間のチケット完売という大盛況に、協会あいさつに立った八角理事長も「力士がいい相撲をとることが一番のファンサービスになる」と土俵上の熱い戦いを期待した。
しかし、直後に幕内の取り組みが始まると、関脇2人が相次いで平幕に敗れ、霧島、貴景勝、琴桜、豊昇龍の4大関がそろってまさかの黒星。続く結びは「なんぼなんでもそれはないで」と念じつつ、いやな予感は当たってしまい、横綱照ノ富士が大の里の投げに手をついた。
5人以上の横綱、大関が初日に総崩れというのは昭和以降初めてらしく、昭和元年から今年で98年となることから、ほぼ100年間なかった大惨事。それほど上位と下位の実力が拮抗しているとみるべきか、上位陣があまりにふがいないとみるべきか…。
今場所も終盤に入り、優勝争いが混とんとしながらも、休場力士が多すぎていま一つ盛り上がりに欠ける。高いチケットを買い、仕事を休んでまで見にきた人も多いはず。人気力士や横綱、大関が休場すれば、人数に応じて払い戻してもいいのではないか。相撲ファンにとって推し力士に対する期待と休場の落胆は大きい。
そんななか、今場所が番付デビューの箕島高出身、郷土力士の序ノ口野田が勝ち越しを決めたのはうれしいニュース。このままけがをしなければ、来年中には関取になっているだろう。(静)