全国的に障害者や高齢者の福祉事業所で、職員が利用者に虐待する事案が多発。去る9日には和歌山県福祉事業団が運営する上富田町の障害者支援施設でも女性職員が利用者の目と口を養生テープで覆う虐待が発生した。事業団によると、利用者が就寝時間になっても大声を出し続けるため、他の利用者からの苦情もあってその女性職員は「虐待とは分かっていたが、何とかしなければならない」との思いで目や口を覆ったそうだ。半面、虐待の様子を撮影した画像を同僚にLINEで送信しており、「公私ともにストレスが溜まっていた」と漏らし、おもしろ半分の行為でもあったとしている。

 障害者施設での仕事はきついとはよく聞く話。今回の虐待は当然、女性職員に問題があるが、虐待をする心理状況に追い込まれるような、大変な労働環境にも要因があるのかもしれない。虐待防止に向けた運営体制の見直しやチェック機能の強化、職員研修はもちろん、ストレスを抱えている職員へのケアも必要だ。

 今回の虐待でもう一つの問題点は、現場で目撃した職員や、画像を受け取った職員らが、すぐに上司に報告しなかったこと。その背景には「職場の人間関係が悪くなるのを避けたかった」との思いがあったという。気持ちは分かるが、どういった職場でも常識的に悪いことをしていると思えば、注意したり、報告したり、勇気を持って行動に移すことも大切。言うのは簡単で実際は難しいが、それがしやすい環境づくりも求められる。

 事業団は会見で記者から厳しい指摘を受け「認識の甘さを痛感した」と深く反省。利用者のことを第一に再発防止へ真摯(しんし)な取り組みを望む。(吉)