「本気の失敗には価値がある」。国内民間企業で初めてとなる打ち上げを目指した宇宙開発ベンチャー企業のロケット「カイロス」は、串本町の発射場から打ち上げられたが、直後に爆発し成功とはならなかった。この映像を見て筆者が真っ先に思い浮かんだのが、冒頭の言葉。アニメ化もされている漫画「宇宙兄弟」の主人公、南波六太の言葉である。六太はこうも言っている、「いい素材を使ってもいいモノになるとは限らないが、失敗を知って乗り越えたモノはいいモノである」と。初めての挑戦となったカイロスはまさに本気の失敗。そしてこの失敗が次の成功へと導いてくれるだろう。

 宇宙兄弟の中でもう一つ好きな言葉がある。「あなたにとって一番金ピカなことは何」。六太と弟の日々人の恩師でありもう一人の母親のような存在である天文学者のシャロンおばさんが、宇宙飛行士を目指そうか悩む六太に優しく語り掛けた言葉だ。六太が子どものころのエピソードを引き合いに、あなたが今一番やりたいこと、目標にしたいもの、最も輝いているものは何か、自分の気持ちに正直になりなさいという思いが込められている。

 3月も今週で終わり、来週からは4月。学生、社会人と新たな一歩を踏み出す人であふれている。ありきたりだが、これからいろんな経験をする中で、失敗することもたくさんあるだろう。失敗を恐れず挑戦することが本物の経験になり、本気の失敗になっていくのだと思う。いろんな経験を積むことで、自分が新たにやりたいこと、なりたいことも出て来るかもしれない。一番金ピカなことが見つかれば、その時は迷わず挑戦してほしい。(片)