今回紹介するのは夕木春央の「十戒」。本選びは基本的にネットでジャンルや内容を検索しているが、今回は作家で選んだ作品。同氏が2022年に発刊し、このミステリーがすごい2023で4位に入った「方舟」が個人的に気に入ったので買ってみた。

 内容は、交通事故で亡くなった伯父が所有していた無人島にリゾート施設を建設する計画が持ち上がり、浪人生の里英と父、開発会社、不動産、建設会社などの関係者合計9人で島に向かう。正円に近く直径は300㍍に満たない小さな島で伯父が建てた別荘や倉庫などがある。到着後、島を散策する9人だったが、そこで大量の爆弾を見つけてしまう。さらに別荘には少し前まで誰かが生活していた痕跡があった。父は身内に爆弾犯がいる可能性に躊躇(ちゅうちょ)し、通報は翌日にし、皆は別荘に宿泊した。翌日、1人がクロスボウで撃たれ死んでいるのが見つかった。そして別荘にあった張り紙には「これから3日間、島に留まらないといけない。そしてその間、絶対に犯人を見つけないようにしないといけない。もし見つけてしまったら、犯人は島を爆破する」と書かれていた。その他、警察への通報やスマホの所持を禁じるなど、10の掟が記されていた。島には残る8人のみ。犯人はこの中にいるが、それを見つけるのはもちろん、探ることも許されない。そして翌日、新たな遺体が発見される――。

 犯人を特定すると遠隔の起動スイッチで島ごとドカンという、かなりユニークな設定。犯人が犯行を行う姿を見ようと思えば見ることはできるが、爆弾がある以上、うかつな行動はできない。圧倒的犯人優位な設定で進む中、訪問者の一人が主人公らとともに犯人を探し始める。どんでん返しに次ぐどんでん返しの展開で、ラストは「方舟」の読者ならさらに驚かされることになる。個人的に「方舟」を超えることはなかったが、「方舟」同様、全く想像できない展開が待っている。(城)