二月になりプロ野球もキャンプが始まった。

 ここに「サラダ記念日」の阪神タイガース版ともいうべき本がある。

 一昨年のことである。阪神タイガースは開幕九連敗で始まった。この本の一ページ目は、

 ―いつまでたっても阪神が勝たないから、短歌を作ることにしました。―

 著者はこれまで短歌を作ったことがなかったそうだ。

 プロ野球の試合は年間百四十三試合。著者はここから阪神タイガースの全試合について短歌を作っていった。阪神愛に溢れた「サラダ記念日」なのである。

 阪神が連敗続きのときの歌。

 阪神のホームは今日も遠すぎてどこにも帰れぬ私みたいに

 阪神が接戦で目が離せない状態のときの歌。

 ベンチから身を乗りだして近本が叫ぶのを見て泣いてしまった(近本は阪神の一番バッターである。昨年はベストナインにも選ばれた名選手)

 阪神の四番バッターが好機で打ったときの歌。

 大山のタイムリーを見て給食がカレーだった日のこと思いだしてた

 阪神が、めっちゃ弱いときの歌。

 三分で攻撃が終わる阪神はウルトラマンにも負けてしまうな 

 阪神のエースピッチャーが調子のいい時の歌。

 青柳の落ちるボールが決まるたびだんだん晴れてきた土曜日(青柳は阪神のアンダースローのピッチャー。低めに落ちる球でゴロで打ち取るときは調子がいい)

 美川憲一を真似て。

 いいえ私は阪神の女ノーアウト二塁で点が取れないの

 阪神が打てないで負けた試合の歌。

 「お薬を出してください」「どんなやつ?」「打てるやつ」「そんなのありません」

 これはほんの一部。阪神の試合百四十三試合とCSの短歌も含まれている。ファンならこころに響く短歌の数々である。(秀)