2月のテーマは「冬の味覚」。「美味しんぼ」の海原雄山のモデルの芸術家、北大路魯山人の著書をご紹介します。

 「魯山人味道」(北大路魯山人著、中公文庫)

 書、画、篆刻、陶芸と多芸多才の芸術家にして美食家。本書の冬の章では、鍋談義が芸術論に発展します。

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 その人数が一回食べるだけの分量のたいを煮る。煮えたらそれをすっかり上げてしまう。次に野菜を入れる。たいの頭などは、よくスープを出すからだしが増える。ところが野菜はだしを吸収する。そういう材料の性質をみて、だしの出るもの、だしを吸うものを交互に入れて煮るというふうにする。そうして一回ごとになべの中をきれいに片づけて、最後まで新鮮な料理が食べられるようにする。食べ方にもこのような工夫がいる。

 私は「なべ料理」の材料の盛り方ひとつにしても、生け花と寸分違わないと思っている。生け花というのは、自然の草や木を、自然にあるままに活かそうというので、そのためにいろいろ工夫をする。料理も自然、天然の材料を人間の味覚に満足を与えるように活かし、そのうえ、目も喜ばせ、愉しませる美しさを発揮さすべきだと思う。そのこころの働かせ方は、花を生けることとなんらの違いもない。