バケツリレーで支援物資を船に運ぶ参加者(日高港)
クレーンを使って支援物資を船から降ろす(由良港)

 県「命のみなとネットワーク」推進協議会が29日、御坊市の日高港と由良町の由良港で海上輸送訓練を行った。台風接近に伴う記録的な大雨で大規模な土砂災害が発生し、由良港周辺地域が孤立、断水が発生したと想定。日高港から船を使って支援のための人員と物資を迅速かつ安全に届けられるよう、官民の連携を確認した。

 協議会は県沿岸の14市町と県、国土交通省近畿運輸局、近畿地方整備局などが昨年2月に設立し、紀中エリアでの訓練は初めて。国、県、御坊、美浜、日高、由良の4市町や、県港湾建設協会、由良ドック株式会社などから約100人が参加した。

 訓練には近畿地方整備局の海洋環境整備船「海和歌丸」や県港湾建設協会の「第十二東丸」など4隻を投入。日高港では海和歌丸の海水を淡水に変える装置を使った実演が行われたあと、参加者が本番さながらに水や段ボールに入った支援物資をバケツリレーで船に積み込んだ。トラックのクレーンを使って500㍑入りタンクなども船に積載し、支援人員も船に乗り込んだ。由良港では由良ドックの岸壁が受け入れ拠点となり、港湾業務艇「はやたま」に搭載された音波装置を使った海中の障害物調査やドローンでの周辺の安全確認を経て、輸送してきた船から人や物資を降ろし、物資は公用車に載せて避難所に搬送した。

 近畿地方整備局和歌山港湾事務所の片岡輝行所長は「多様化した災害に対応するため港を活用した支援物資のルートを確立しておくことが必要」。4市町の首長も参加しており、三浦源吾御坊市長は「能登半島地震を受けて備えの重要性を再認識している」、山名実由良町長は「災害で孤立集落が発生する恐れがあり、こういった海上輸送の訓練は非常に心強い」と話した。