昨年は「VIVANT」「らんまん」など、面白いドラマが豊作だったように思います。個人的にハマッたドラマもたくさんありましたが、私が特に好きだったのが4~6月期に放送されていたこのドラマ。在阪局のABCテレビが日曜夜10時の枠で制作した第1作目で、朝ドラの「ちゅらさん」や「ひよっこ」などで知られる人気脚本家の岡田惠和さんが手がけています。

 物語は、それぞれ何かしらの生きづらさを抱えた女性3人の友情を描いています。車いすの母親と2人暮らしで、自分のせいで母親が車いす生活になったと負い目を感じているサチ、家族からも友達からも見放され、社会不適合なんじゃないかと人知れず苦しみを抱える翔子、自分を捨てたくせに、都合よくお金をせびりに来る母親が憎い若葉。そんな3人が、ラジオ番組のツアーを通して出会います。ツアーの思い出にと宝くじを購入し、それが高額当選。そして3人は再会し、当選金を元手にカフェを開こうと決心します。自分の幸せを追うのではなく、3人で幸せを共有しようとしたのです。

 ドラマはサチを清野菜名、翔子を岸井ゆきの、若葉を生見愛瑠が演じています。3人娘が織りなす空気感がとてもよくて、このシナリオにぴったりだなとしみじみ。平坦なストーリーですが、3人娘がただ集まるだけなのに、混沌とした人生の中に現れた希望みたいなものが感じられ、背中を押してくれる気持ちになります。

 サチが「煮詰まったとき、コンビニで一番高いアイスを買って食べる。そうすると、ちょっとまだやれるかもって思う」と翔子と若葉に打ち明けるシーンが象徴的で、ついつい共感。

 なんらかの生きづらさを感じる現代にマッチした、人生に疲れた時の処方箋になりうる物語だなと思います。巻末にある岡田さんとドラマプロデューサーとの対談も必見です。        (鞘)