幅広く、息長く、誰にも真似のできない活躍を続ける黒柳徹子さんの最新著書、40年以上前の空前のベストセラーの続編をご紹介します。前作は昨年、世界で2500万部以上という驚異的な発行部数を記録し、世界一発行部数の多い自叙伝としてギネス記録になりました。最近、アニメ映画化も。

 内容 小学校1年生で退学となってユニークなトモエ学園に転校し、やさしく面白い小林校長先生のもと、のびのびと学び遊んだトット。新交響楽団(現N響)バイオリニストのパパ、美人のママ、かわいい弟や妹と幸せな暮らしを送っていたが、時代はやがて戦争への道を進み、一日分の食べ物が大豆15粒という日も。そしてとうとう音楽家のパパにも召集令状が来て、北支へ出征。そして東京大空襲の数日後、ママとトット達はわずかな縁だけを頼りに、知る人もほとんどいない遠い青森の諏訪ノ平へ決死の覚悟で疎開していく。ホームの混雑でママ達とはぐれ、たった一人で夜行列車に乗ったトットはすし詰めの人込みの中、長い時間をかけて北を目指す。途中の駅で無事にママ達と合流したが、青森で唯一の知人に断られれば行き場はなくなる。幸いその人は親切に世話してくれ、トット一家が暮らせるように納屋を提供してくれる農家が見つかった。ママもトットも、たちまち土地に順応。お嬢さん育ちだったママがたくましく奮闘してかせいでいく様子に目を見張るトット。トットはトットで、クラスの女の子に「ジンジョッコ描いてけろ」と言われ全く意味がわからなかったが、「分からない」というと親密になれそうな雰囲気が壊れそうな気がして頭を巡らせ、「おめえのジンジョッコ描いてみろ」というと、その子はおかっぱ頭のお人形の絵を描き始めたので「ジンジョッコは人形か」と分かった。その地で終戦を迎え、たくましくなったママのかせぎで暮らしのめどもついたが、パパはシベリアの収容所へ連れていかれたきり、なかなか帰ってこない…。

 前作は中学生の時、普段あまりベストセラー本など買わない母が買ってきたので、「ザ・ベストテン」が好きだったこともありすぐ読みました。全編面白く、最後には感動したのを覚えています。今作も表紙絵はいわさきちひろ。「立てひざの少年」だそうですが、いたずらっ子のような爽やかな微笑みが、明るくマイペースで生きる「トット」のイメージにぴったり。

 非常に読みやすく、内容が面白い。独自の視点と感覚で正しいと思ったことを貫く、ピュアな正義感と明るさを持った愛すべき「トット」の行動に引き込まれ、どんどん読み進められます。御年90歳の今もそれは変わっていないと、テレビを見ていて思います。後半、NHKに入ってからのことはもう一つの自叙伝「トットチャンネル」にも詳しく書かれており、そちらもお勧めです。(里)