英国で郵便局員の冤罪事件が大問題となっており、スナク首相が「これはわが国の歴史上最大級の冤罪だ」とし、被害者の名誉回復と補償に全力を挙げる考えを示した。

 1999年から2015年にかけて、郵便局の窓口の現金とシステム上の残高の不一致が続発。郵便局長らが着服の疑いをかけられ、不足分を埋めるため借金をしたり、実際に横領等の罪を着せられた人が700人以上も出た。

 原因は日本のIT企業の現地子会社が提供した会計システムだったが、それを導入した国有会社は局長らからの訴えを受けながら欠陥を疑わず、警察よりも権力の強い内部監察に捜査を任せ、問題を放置していた。

 結果、犯罪者とされた局員と家族は増え続け、自殺者まで出た。取り返しのつかぬ被害が拡大するにつれ、郵政当局はますます事実を公表できなくなっていった。国民に嘘をつき続け、戦争を継続した旧日本軍を想起させる。

 収監された元郵便局員らはなんの落ち度もない。悪いのはシステムの調査を拒み、事実を認めず、被害を拡大させた国有会社とシステムを提供した企業である。なぜ欠陥が判明したときに事実を公表、謝罪しなかったか。アイドル事務所創業者による少年数百人への性的加害、和歌山県発注工事の施工不良もしかり。

 人は誰でもミスを犯すし、どれほど安全運転を心がけていても事故は起こす。己の立場や被害、周囲への影響の大きさを考えれば逃げ出し、隠したくもなるが、それは最悪の選択であることをあらためて肝に銘じたい。 

 当事者の欠点や行為、過失を批判、断罪するのはたやすいが、最悪を選択してしまう状況を放置、黙認してきた周囲も同等に責任がある。(静)