今回紹介するのは、くわがきあゆの「レモンと殺人鬼」。第21回「このミステリーがすごい!」大賞・文庫グランプリ受賞作品で、ネットで面白そうな本を探す中、「どんでん返しに次ぐどんでん返し! 爽快感すら感じさせる異色のスリラー!」のキャッチコピーにひかれました。

 内容 大学職員として働く小林美桜。警察から連絡を受け、妹の妃奈が遺体で発見された。10年以上前、父親を14歳の少年に殺され、母親は蒸発。妃奈は保険外交員として働き、美桜は地元大学の事務職員の派遣社員として働いていたが、生活は苦しく食べていくだけで精一杯。2人は数か月に一度顔を合わせ、互いの不遇を嘆き合う仲だった。

 そんな中、マスコミは妃奈が事故で亡くなった恋人の保険金の受取人になっていたという事実に飛びつき、世間は妃奈を保険金殺人の容疑者としてみるようになった。美桜は何としても妃奈への誤解を解きたいと思い、人気の洋風居酒屋を経営する妃奈の元恋人のもとを訪ねようとするが門前払いを受ける。美桜が働く大学に通う同級生の彼氏でジャーナリスト志望の渚丈太郎が妃奈の潔白を証明する手伝いをしたいと申し出る。2人は汚名を晴らすべく調査を始める。

 妃奈の潔白を証明することを中心に展開するストーリーだが、二転三転とするのが楽しいところ。過去の回想シーンに出てくる人物や父親を殺害した男が出所後に行方不明になっているということも物語を盛り上げる。後半はさらに二転三転が繰り広げられるとともに、伏線が回収され、思いも寄らない人物が登場することも。読み終わって思うのが登場する人物にまともじゃない人が多過ぎる。ただそこもミステリーとして楽しめる。とにかく最後まで犯人がわからず、登場人物すべてを怪しんでしまう中、二転三転と翻弄され、また作者に騙されながらも、ワクワクしながら読み進めることができる一冊になっています。(城)