旧北上川の堤防で斉藤所長(右から3人目)から説明を受ける研究会メンバー

 御坊市や周辺町の官民でつくる津波防災研究会の有志が20・21日、2011年3月の東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県と岩手県を視察した。初日は宮城の石巻市を訪れ、復旧・復興の津波対策として建造された旧北上川の堤防や海岸線の防潮堤などを見学。委員らは御坊周辺の地震、津波対策の一層の強化の必要性を再認識していた。

 研究会では東日本大震災の被災直後を含めこれまで2度の現地視察を行っており、今回は被災後の地震、津波対策を参考にし、地元日高川河口の堤防かさ上げや西川の水門設置などの必要性を研究しようと訪問。谷口邦弘会長はじめ、委員の建設業代表や西川の水門設置を提唱している中村裕一県議、衆議院議員秘書の二階俊樹氏ら10人が参加した。

 海沿いの石巻市は震災で高さ8・6㍍の津波が襲い、死者3553人、行方不明者417人、建物被害の全壊2万44棟、半壊1万3049棟が出た地域。同市を流れる旧北上川河口は昔から堤防がなく、船の停泊地として栄え、周辺には住宅や商業地などがあったが、震災で河川を逆流する津波による壊滅的な被害に遭った。

 今回は国土交通省東北地方整備局北上川下流河川事務所の斉藤喜浩所長らの案内で、高台の日和山(標高56㍍)から海岸線の防潮堤を見学。旧北上川の河口に移動し、昨年3月の完成まで11年計画で1100億円を投じ、河川に総延長15㌔、高さ7・2~4・1㍍の強靱な堤防を整備したことの説明を受けた。

 この河川では国交省のかわまちづくり計画の登録を受けて、河川敷に食事処や産品販売所、交流スペースなどを整備し、2022年度かわまち大賞を受賞。河川の中州には同市ゆかりの漫画家石ノ森章太郎の「萬画館」もあり、平日でも多くの人が訪れるスポットに。御坊市の日高川河川敷も今年8月、かわまちづくり計画に登録されている。

 一行は齋藤正美石巻市長も表敬訪問。岩手の陸前高田市に移動し、震災追悼記念施設や津波被害で唯一残った奇跡の一本松、気仙川の水門なども見て回った。

 初日の視察を終え、谷口会長は「日高川河口の堤防も下がってきているところがあり、津波対策としてかさ上げが必要。今回の視察を大いに参考にし、今後、関係機関に働きかけていきたい」と話している。