紀州材のぬくもりあふれる木造ビニールハウスで高田代表

 県内の優れた建築物を顕彰する第7回きのくに建築賞の最終審査が19日、和歌山市の県立近代美術館で行われ、最優秀賞にみなべ町晩稲の紀州高田果園・南高梅加工場が選ばれた。紀州材をふんだんに使った珍しい木造のビニールハウスで、骨組みの美しいアーチや木材の温かくシンプルな景観などが審査員に評価された。

 きのくに建築賞は、県建築士会などでつくる建築三団体まちづくり協議会が主催。建築物とそれに携わった人の思いにスポットを当て、建築物を次世代に残そうと2016年に創設された。

 紀州高田果園は南高梅発祥の農園として知られ、梅の有機栽培にも力を入れている。梅加工場は高田智史代表取締役(66)が「環境に調和した加工場をつくりたい」と数年前から構想。昨年11月から工事を始め、今年8月に完成した。無垢の紀州材をふんだんに使ったビニールハウス棟と漬け込みなどを行う加工棟の2つの棟がある。

 ビニールハウスの骨組みは鉄が一般的だが、梅から出る酸や経年劣化でサビが発生しやすくなり、梅に混入してしまう可能性もある。高田代表はこのような不安も解消できればと、木造ビニールハウスの建築を決意。しかし、みなべ地域では前例がなく、設計や施工業者らとともに試行錯誤を重ねた。

 加工場は100年続く建物にしようと、雨風で木が腐らないよう、柱や壁、天井などすべての木材にはっ水加工も施されている。作業は社員や同園が運営する就労支援作業所の利用者らで行った。外観にもこだわり、外壁は地元の炭焼き職人が表面を炭焼き。炭化した黒い壁を生かし、扉は赤、屋根部分は白い塗装を施し、梅おにぎりをイメージした見た目になっている。

 受賞に際して高田代表は、「農業関係の建物で賞をいただき、うれしく思います。これから木造のビニールハウスが増え、梅仕事のイメージ向上につながったり、この先ずっと使えるものとして継承してもらいたい」と話している。