日高町で先日、キンセンカの花の苗植えが行われた。なぜキンセンカなのか、物語は66年前にさかのぼる。1957年2月10日午後9時ごろ、神戸港に向けて航行中のデンマーク船エレンマースク号が日ノ御埼灯台沖で火災を起こしている徳島県の木材運搬船を発見。天候が悪く救命ボートでは近づけず、綱を付けたブイを投げ入れ、被災した船員がたぐりよせたが、救助される最中に力尽きて海中に転落した。それを見ていたクヌッセン機関長が海に飛び込み、助けようとしたが、荒波にのまれて命を落とした。

 クヌッセン機関長の勇敢な遺徳をしのび、美浜町や、遺体が漂着した日高町では毎年慰霊祭を行っている。デンマークとの縁も続いており、サッカーの日韓共催ワールドカップではクヌッセン機関長が縁でデンマークチームが和歌山でキャンプを行った。慰霊祭では毎年デンマーク関係者も参加しており、交流の関係は今も続いている。串本町のエルトゥールル号を連想させる物語であり、後世に語り継いでいくべきことである。

 冒頭のキンセンカはクヌッセン機関長が愛した花。町内各所に2000株が植えられ、1月から2月ごろに花を咲かせる。花から種を採取して育苗し、また定植するサイクルを続けており、今年が16代目という。小中学校でも植えられるので、児童生徒にもクヌッセン機関長の遺徳にふれる機会になることは素晴らしいこと。クヌッセン機関長も天国からきっと喜んでいるだろう。キンセンカの花をもっと増やし、町民に配布して各家庭でも育ててもらえるような取り組みに広げれば、人を思いやる気持ちも広がるのではと感じた。(片)