人の体は日々、3000億個もの細胞が新たに生まれ、同じぐらいの数の細胞が死んでいるという。外から病原体や異物などの抗原が侵入したときは、免疫細胞との戦いが始まり、抗原を排除することで私たちの健康が保たれている。

 遺伝子の異常によって生まれるがん細胞も毎日、数千個生まれているが、それを見つけたナチュラルキラー細胞や他の免疫細胞の指令を受けたキラーT細胞が攻撃を加え、がんが大きくなる前に退治してくれている。

 しかし、人は加齢とともに少しずつ免疫力が低下する。悪玉をやっつける力が弱まるとがん細胞の成長を許し、一定の大きさに達すると一気に増殖。そのまま放置すれば他の臓器に転移し、命の危険につながる。

 人気漫画「はたらく細胞」はこの免疫と病原体を擬人化し、体内の戦いをコミカルに描く。この世界は現実の人間社会と同じで、組織や地域の安全を脅かす危険人物はいつどこに現れるか分からず、周囲の人も気づかぬうちに増殖する。

 過疎が進む地方の小さなまちにとって公共工事は、業者だけでなく地域の人々の暮らしを支えるかけがえのない〝産業〟ともいえるが、健全に見える血液(税金)の循環が知らぬ間に歪み、まち全体の体力が低下していることがある。

 官製談合や贈収賄という病。一度完成したシステムはなかなかやっかいで、捜査のメス(手術)で悪い部分が取り除かれたと思っても、組織の見えない部分に浸潤して再発してしまうこともある。

 悪代官と越後屋の時代から、いまもなくならぬ政治家や公務員と業者の癒着。ワクチンも特効薬もなく、それぞれが向くべき方を向いて仕事をし、誘惑に負けない強い意志(免疫力)を保つしかない。(静)