女性は見た目の良し悪しで人生が決まるといっても過言ではありません。学生時代は特に、社会に出てもそれなりに。この本は表題の〈かわいそうだね?〉と〈亜美ちゃんは美人〉の2作が収録されていますが、それぞれの主人公の女性は、男性から見て〝守ってあげたくなるあの子〟とどうしても比べてしまい、苦悩を抱えます。

〈かわいそうだね?〉

 物語 主人公の樹理恵は、恋人の隆大から求職中の元彼女・アキヨを自分の部屋に住まわせたいと懇願される。言語道断の行動だが、隆大はお金も頼る人もなく就職活動を頑張るアキヨが「かわいそうだから」と言い張り、樹理恵もなんとなくその言葉に納得して受け入れてしまう。アキヨは樹理恵より2つ上の30歳。だが樹理恵はブランド物で身なりを固めた自分より、ボロボロの格好をした頼りない感じのアキヨがモテるのだろうと劣等感を持つ。そわそわする日常が半年続き、アキヨはやはり隆大とヨリを戻したいがために理由をつけていたのだと発覚。我慢してきた樹理恵が取った行動は…

〈亜美ちゃんは美人〉

 物語 主人公のさかきちゃんは、高校の入学式で席が前になった亜美ちゃんと仲良くなるが、亜美ちゃんは誰もが見とれてしまうほどの美人。さかきちゃんは亜美ちゃんを別に好きじゃないのになぜか一緒にいる。尊重される存在の隣にいるだけで、女子からは同じ身分として扱われたが、男子からはただの引き立て役にしか見られず、心無い言葉も浴びせられた。大学卒業後、亜美ちゃんは婚約者をさかきちゃんに紹介するが、タトゥーが入ったアウトローな外見、職業も分からない男性で…
 心をえぐるような綿矢氏の比喩も相まって、共感の嵐。そんな子が身近にいたら現実世界では嫉妬で終わりそうですが、物語は心がスカッとするような終わり方で、世の中少しは平等なのかもと希望が感じられるのが救いです。(鞘)