前作「殺した夫が帰ってきました」が、17万部を超える大ヒット作となった著者の最新作です。

 あらすじ 私は“善人”か、それとも“悪人”か――。「ねえ……あそこに誰かいない?」。全校生徒が集合する避難訓練中、ひとりが屋上を指さした。そこにいたのは学校一の人気教師、奥澤潤だった。奥澤はフェンスを乗り越え、屋上から飛び降りようとしていた。「バカなことはするな」。教師たちの怒号が飛び交うも、奥澤の体は宙を舞い、誰もが彼の自殺を疑わず悲しんだ。しかし奥澤が担任を務めるクラスの黒板に「私が先生を殺した」というメッセージがあったことで、状況は一変し……。語り手が次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りになる。秘められた真実が心をしめつける、著者渾身のミステリー!

 タイトルに惹かれて購入しましたが、あまりにも続きが気になって一気読みしてしまいました。作品としてはとても読みやすかったです。黒板に書かれた「私が先生を殺した」という告白。人気教師の屋上からの転落死。全校生徒が目撃する中の悲劇。なぜ彼は死ななければならなかったのか。先生を殺したのは一体誰なのか。教師と生徒たちの視点から、あの日までに何があったのか、そして何が起きたのか、先生を殺した「私」は誰なのか、が明らかになっていく何ともいえないモヤモヤ・後味が残る作品です。読み進めていくうちに、だんだんと人の悪意や社会の理不尽に怒りが込み上げ、やるせない思いで胸が締め付けられました。物語の終盤ではきちんとタイトルも回収されていて、「ああ、こういうことだったんだな」と納得(納得はしてもモヤモヤは決して晴れませんが…)。最後に校長が言っている「間違いに気づいたときは立ち止まる、そして後ろを振り返る」が、誰でもできることではなく、難しいことだと分かっているからこそ心に沁みました。(米)