
長きにわたりお茶の間を楽しませているタモリさん。タモリさんに関する書籍は多数出ていますが、本書はファンの中でも人気の一冊です。直接の取材はなく、これまでのインタビューや対談などで語ったことをまとめているのですが、著者の感じた「タモリ像」に説得力があり、尊敬の念が伝わってきます。
私にとってタモリさんといえば、32年間続いたお昼の生放送「笑っていいとも!」の総合司会。浮き沈みの激しい芸能界で、旬の著名人やタレントが入れ替わり立ち代わりでレギュラー出演し、曜日ごとに特色の違うレギュラー陣をまとめて盛り上げる。名物コーナーのテレフォンショッキングでは、日替わりのゲストで年の離れた初対面のタレントとも会話を途切れることなく場をつなぐ。画面の中で当たり前に見ていましたが、社会人となって人と接することの大変さを痛感した今、それがいかに凄いことなのかを改めて思わされます。
タモリさんはよく「人に興味を持たない」と発言していますが、見ているとなぜかその場が面白そうに感じます。本人はわざわざその場を盛り上げようとはしないのが基本スタンスのようです。これは素人が真似できるようなものではなく、芸能界で地位を確立したタモリさんだからできる業。タモリさんが楽しそうにしていたら楽しい、つまらなさそうにしていたらそれもそれで一興。特に何をしているわけでもなく、タモリさんがその場をどう感じているのかが一つのコンテンツなのでしょう。タモリ倶楽部やブラタモリ然り。
博識多才なタモリさんですが、「あんまり社会と関わりたくない」のだそう。それなのにいろんな人に慕われ寄って来る不思議。このほかにも「やる気のある奴は去れ」「予定調和は嫌い」など数々の名言が。知れば知るほど深みを感じるタモリさんの哲学、「タモリ学」という科目があれば真っ先に受講したいものです。(鞘)