7月のテーマは七夕にちなんで「宇宙」。理学博士が、哲学的な視点も含めて宇宙の神秘についてやさしく語った一冊をご紹介します。

 宇宙の不思議(佐治晴夫著、PHP文庫)

 サブタイトルは「宇宙物理学からの発想」。全体的に文学的、哲学的な視点で深みのある内容となっています。美しい序文の一部をご紹介。

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 みなさんは「まひるの星」を見たことがありますか。青い空の底ふかく、まるで針の先でつついたように鋭く光る白銀色の一点。あるいは瑠璃色のキャンバスのまんなかに小さな小さなひとつぶの金の粉をそっとおいたとでもいいたいような…。風の強い日には、まるで小さなダイヤモンドが燃えているかのように、美しいほのおがせわしくゆらめいています。

 これは望遠鏡で見た「まひるの星」の情景ですが、その光景のすさまじさは私たちの想像をはるかに超えていますから、はじめて見せられた人のすべてが驚きの声をあげ、そして絶句します。(略)私たちは日常生活から視点をほんの少し変えるだけで、宇宙がいかに美しく、しかも巧妙につくられえ、私たち人間もそれらとの微妙なバランスの上に存在しているという事実を実感することができます。そのとき、人はやさしくなれるような気がします。