以前紹介した、日本の昔話をミステリで読み解いて好評を博した「むかしむかしあるところに、死体がありました」に続く、著者渾身の昔話ミステリ第2弾です。本作品は、西洋童話 「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠り姫」「マッチ売りの少女」をベースにした連作短編ミステリで、今作の主人公は赤ずきん。独立した短編の集まりである第1弾とは少し異なり、赤ずきんが本作を通じての探偵役を果たす連作仕立てになっています。また、全編を通して「大きな謎」も隠されていて、わくわく・ドキドキが止まりません! いくつかあらすじを紹介します。

 ガラスの靴の共犯者 継母と2人の姉に虐められているかわいそうな少女・シンデレラに出会い意気投合した赤ずきんは、魔女・バーバラに姿を変えてもらい、舞踏会へと出かける。しかし、二人を乗せたカボチャの馬車は炭焼き職人・ハンスを轢いてしまい――。

 甘い密室の崩壊 魔女が住むお菓子の家から、無事に逃げ延びたヘンゼルとグレーテルの兄妹。2人はお菓子の家を利用して、継母の殺害を目論む。完全犯罪は成立するかに思えたが、たまたま現地を訪れた赤ずきんによってその罪が暴かれていく。

 童話ではとてもいい人、ステキな人、善良な主人公のはずの人たちも、ちょっと設定を変えるだけでこんなに変わるんだな~と思いながら読み終えました。トリックが使われた事件からの解決――という流れの短編でさらっと楽しめます。複雑すぎないミステリで、謎解きも楽しめる小説だと思います。また、とても読みやすい小説なのでミステリが初めての人や小説が苦手という人にもオススメです。身近に感じられる動作や感情の描写、人間味たっぷりな表現がユーモアで、童話とサスペンスが組み合わさってダークな雰囲気がある…そんな魅力的な一冊です。(米)