
今年2月に発生したトルコ・シリア地震の義援金を個人で募り、被災者の支援を行った日高川町の熊谷穂波さん(39)の元に、支援を受けた子どもたちからお礼のメッセージが届いた。義援金で必要な物資を購入し被災者に提供するなど現地で熊谷さんに協力したTuncar Karatas(トゥンジェル)さん(48)が来日し、現地や支援の様子を報告した。
熊谷さんはトルコ生まれ。2歳まで過ごしたトルコを生まれ故郷として大切に思っており、被災状況に心を痛めて募金活動を始めた。熊谷さん家族がトルコのイスタンブール在住当時、合気道の師範だった父研二さんは仕事の傍ら道場を開き、現地で多くの弟子に指導し合気道を広めた。トゥンジェルさんは研二さんの合気道の弟子で、被災者の支援活動を行っている。
熊谷さんは「義援金を信頼できる人に託し、本当に支援が必要な人に確実に届けたい」と強く思っていたことから、トゥンジェルさんに協力を求めた。トゥンジェルさんは、壊滅的な被害を受けたハタイ県から親戚を頼ってイスタンブールに避難し小さな家を借りて暮らしている2~14歳の子ども7人と負傷している大人5人を見つけ、支援することに。当初は被災地の避難テントで暮らしていたが、氷点下の寒さなど状況は厳しく、イスタンブールに移ったという。しかし、被災地を離れたことで支援の手は届かず、生活は困難を極めていた。熊谷さんから預かった義援金でトゥンジェルさんは、衣類や食料、トイレットペーパーなど生活必需品を購入し、光熱費の支払いなどにも充てたほか、子どもたちが学校へ通えるように手配した。被災者を装い、現金を要求する人も近付いてきたが、決してお金を渡さず慎重に対処した。
来日したトゥンジェルさんは熊谷さんに「古い建物が多く、この地震で5つの都市が壊滅。簡単には進まない復興に今は必死になるしかない」などと被害の状況を説明。支援物資を購入し長く連なったレシートや領収証を渡し、子どもたちと買い物している写真も見せて支援内容も報告した。支援を受けた子どもからは、かわいらしい絵と一緒に「困っていたとき、必要な物を満たしてくれた」とお礼のメッセージが届いた。メッセージはトゥンジェルさんが代筆したもの。子どもたちは何度も手紙を書こうとしたが、未だ大地震の恐怖やストレスで手が震えて書くことができなかったという。
熊谷さんは「日本とは事情が違い、心無い人に奪われることなく義援金が必ず被災者に届くことを願っていたので、直接支援ができ安心しました」と笑顔を見せ、「多くの方に募金にご協力いただき、ありがとうございました。皆さんの善意をこのような形で支援に使わせていただきました」と感謝した。「今も多くの人が大変な状況にあるので、継続して義援金を募り、少しでも支援したいと思っています。引き続きご協力をよろしくお願いします」と呼びかけている。