四十数年前の小学生だった頃、担任の先生が「将来はロボットの導入が進み、人間の働く場所を奪ってしまうような時代が来るかもしれない」と言った。確かに産業ロボットやコンピューターが普及したが、現状では担任の先生が言ったように人間の働き場がなくなってしまったとはいえない。ロボットの導入は生産性を高め、新しい分野の業種がつくり出されたため人間が不要にはならなかったのだろう。それどころか、今は人手不足に陥っている企業も少なくない▼近年、話題となっているのが人工知能(AI)。インターネットで調べてみると、AIの明確な定義はないようだが、人間のような知能を持ったコンピューターという。現在では高度な技術で人間のように自然な会話ができるチャットサービス機能が登場し、話題を呼んでいる▼これまでのソフトは知りたい事柄を入力すると、それに関連した記事をずらりと紹介してくれ、その中から自分が求めたいものをいくつか読み、自分なりの考えをまとめた。しかし、最新のAIは最初からまとまった1つの回答を与えてくれる。悪用だが、学校の宿題なども不正に利用することもできるし、論文問題でも課題をそのまま入力すれば完成形で返してくれる▼いままでは人間が考えなければいけなかったことをすべてAIがやってくれることになる。そうなれば、小学校時代の先生が言ったようにロボットやコンピューターに人間の働き場を奪われてしまうのではないか▼「人間は考える葦である」。フランスの哲学者パスカルの名言だ。人間は自然の中では弱い存在だが、考えることこそ人間に与えられた偉大な力という意味。AIの存在で人間が考えることをやめてしまうと、弱さしか残らないのではないか。(雄)

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