
難病を抱えながら趣味で絵を描いている元教員の前田宜志(たかゆき)さん(69)=御坊市塩屋町北塩屋=の個展「たかゆき展~古希~」が27日まで、御坊市薗、本町商店街の「トリノスギャラリー」で開かれている。
前田さんは36年間小学校の教員を務め、60歳で退職してから「何かやってみたい」と絵を習い始めた。元々絵は好きで、高校の時は美術部だった。御坊市にあった洋画愛好会のひまわり会に所属、和歌山市の絵画教室に通うなどして取り組み、4年前には御坊市展で奨励賞を受賞した。ちょうどその頃、難病の骨化症を発症。動きなどに不自由を抱えることになった。コロナ禍でもあり教室に通えなくなったが、それまでに訪ねた場所の写真を見て絵に描いたり、玄関にいたカエルなど身近なモチーフを写真に収めたり、創作に励んできた。「病気になると『何もしたくない』と思いがちだが、それではいけない。やはり生きている限りは、前へ前へと進んでいく気持ちを持ちたい」と思い、8月に古希を迎える記念の意味も込めて今回の個展開催を決めた。
市展奨励賞の作品は25号の油彩画で、「白崎立巌岩Ⅰ」。白い石灰岩にはガーゼを貼り付けて質感を表現し、緑がかった青い海、淡い空の色とのコントラストが美しい作品。「完成まで4カ月かかりました」と話す。そのほか、海から上がる花火を黒い紙に色とりどりのパステルで迫力満点に描いた「空を彩る」、娘のいる東京の水族館で見た熱帯魚等を絵本風にかわいらしく描いた「回って回って」など、約40点の絵画、約20点の写真作品が並ぶ。
前田さんは「多くの方に見ていただき、難病であってもこのようなことができると、同じ境遇の方々に勇気をもっていただければうれしいです」と話している。ギャラリーを運営する中川貴雄さん(44)は、「毎日会場に来てくださるのですがとても楽しそうで、個展を開く楽しさを実感していただけてよかったと思います」と話している。
展示時間は午前10時から午後5時まで(最終日は4時半まで)。