
常に警世の書を発し続ける著者が、ロシア軍によるウクライナ侵攻について怒りを込めて解説した「ウクライナ戦争論」の第2弾が、先月出版されました。
内容 人類がおびただしい犠牲を出しながらようやく到達し、機能させている『国際平和』の構築システムを、現ロシア政権は根本から破壊している。それがウクライナ侵攻の最大の問題。
「もしもウクライナが敗れて、領土を失ったり、あるいは最悪の場合、国家が消滅したりするような結果になれば、それは国際法秩序の完全崩壊を意味する。その時は『帝国主義の復活』だ〓 軍事力だけが意味を持つ世界になり、日本を含め、欧米などの民主主義国家は途方もない害を被ることになるだろう」(第3章「ウクライナ、理不尽な防衛」)。
また、前作でもこの侵攻が中国の行動に影響を及ぼす可能性が懸念されていましたが、より危機の高まった現状に呼応するように、今作では中国と台湾に関する歴史を解説。
「ロシアが失敗したら、中国もうかつに台湾進攻に踏み切れなくなる。今は世界史的な分水嶺にある」。
昨年、中国外務省の報道官が「日本は台湾問題で歴史的な罪を負っており、とやかく言う資格はない」と発言。これを受けて著者は、中国と台湾の歴史を解説する。
日本が台湾を領有したのは1895年(現在の中国=中華人民共和国は存在していない)で、日清戦争の勝利により清国から割譲された。それ以前の台湾は清朝からほぼ放置され、文明が及ばず風土病が蔓延する状態だったが、日本は治安や衛生環境を改善、道を造り、橋を架け、教育を普及し、産業を育成。ありとあらゆる振興政策を行った。「現地人に対してこれだけ恩恵の及んだ『植民地』など他にはほとんど例がない」。
日本は半世紀にわたって台湾を領有、1945年の敗戦により放棄した。領有権を引き継いだのは蒋介石の中華民国。49年、中華民国との内戦に勝利した毛沢東が中華人民共和国の建国を宣言、敗れた中華民国は台湾に政府を立てた。その後、今日に至るまで、中華人民共和国の支配が台湾に及んだことは一度もない。
「台湾についてとやかく言う資格がないのは中国の方なのだ」。
古代から一貫して「日の本」であり続けてきた我が国からみると、民族の違う国が次々と興っては滅びていった中国のあり方は分かりにくいですが、きちんと把握する必要があると思います。
私は昔から台湾が大好きで、今の情勢が心配で仕方がありません。国際世論の力で状況を好転させることができるものならばと祈る思いでウクライナと台湾を見ています。
世界のあるべき姿への視点を明確に掲げる本書は、心強さを感じさせてくれます。(里)