サッカーボールほどの白い丸いものを大事そうに抱えて撫でる着物姿の少年の挿絵が、小4か小5の国語教科書に載っていた。植物学の父、牧野富太郎博士が少年時代にオニフスベという珍しいキノコを見つけた話だ。4月24日は「植物学の日」。昨年生誕160年を迎えた博士の誕生日にちなみ制定された◆小1で初めて買ってもらった伝記がなぜか「牧野富太郎」。国語教科書の話にも親しみを感じた。今季のNHK朝ドラ「らんまん」は彼をモデルとしており、神木隆之介が主役を好演している。牧野博士は慶応年間の生まれで昭和32年(1957)に94歳で他界。ドラマの時代も幕末から昭和中期と長い。先日の放送では、主人公が仕事で上京した機会に東京博物館へ憧れの植物学者を訪ねた。彼は主人公が大事に持って行った古い植物図を見て、「僕が初めて描いた図だ。小学校でこれを見たのか。それで、僕を訪ねてきてくれたのか」と驚き、子どものようなキラキラした瞳でコクンコクンとうなずく主人公を見て、ぼろっ、と涙をこぼれさせる。見る方も思わず涙を誘われた◆牧野博士は老舗の造り酒屋当主という地位にありながら植物の魅力に魅せられる。学校教育では小学校中退だが、好きな道を一心に進み、世界に名を馳せる学者となった。「雑草という草はない」という、有名な言葉を遺している◆小さな花も草も、すべて独自の名前を持つ存在。その視点はすべての分野に通じる。十把ひとからげでなく一つ一つの見極めがつけば、あらゆる色を混ぜ合わせたグレーでなく、それぞれの色が輝いて虹のように見えるだろう◆すべての草には名前がある。足元に揺れる小さな花を見つめる視点を持つことができれば、人生は豊かな彩りに満ちる。(里)


