日高川町土生地内、大成中学校南の県道に歩道を設置する道路拡幅工事が行われるのを前に、拡幅する範囲の遺跡発掘調査が行われた。

 近年、土木工事や建設工事、造成工事など土地の形状を変更する場合は、埋蔵文化財の有無の確認が必要となっており、周知の埋蔵文化財包蔵地内の工事は、遺跡を現状のまま保存できない場合、事前に発掘調査を行って遺跡の記録を残し、可能な限り一般に公開するなど活用に努める必要があるとされている。

 今回の現場は、1986年に道成寺駅周辺で大規模に調査された東郷遺跡の北東の端に位置しているため、発掘調査が行われた。道路面から150㌢ほど掘り下げられ、地面の断面は薄い茶色や黒い土など層になっているのが分かり、長い年月をかけて堆積した自然の力を感じる。調査の結果、鎌倉から室町時代の中世のものと考えられるつぼの底部分と思われる須恵器や皿の欠片、素焼きの漁網の重りなどの遺物が出土した。遺構(人の手によって掘り下げられた痕跡)は、いくつもの土坑や溝も発見された。水が湧き出すポイントと、そこを囲むように大きめの石がたくさん出てきて、石組みの井戸の跡と想像できるものもあった。以前の東郷遺跡の調査では、弥生時代中期から古墳時代前期にかけての遺構や遺物が発見されていたが、今回は中世のものが出土し、新しい発見になったという。

 すっかり埋まってしまったものを丁寧に掘り出し、小さな土器の欠片や人の生活の痕跡を見つけ、そこにどんな世界や暮らしがあったのか分かることがおもしろく、特別な場所や歴史的人物に関係なく、大発見でなくても、遠い昔に確かにそこに存在したものが感じられるロマンがあった。(陽)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA