全国的に、今年の桜は例年より早かった。当地方でも、4月を待たずに各地で満開を迎えていた。2020年、21年、22年と3度の春を「浮かれ眺める大勢の人」という賑わい無しに過ごした桜が、コロナ禍という今までにない「長い冬」からの雪解けの兆しを察知したかのように◆日本の象徴、日本人の心のよりどころとなる桜。これまで広く世界各国に届けられてきた歴史がある。最も有名なものは米国ワシントン、ポトマック河畔の桜並木だろう。米国から日本へはハナミズキが贈られた◆ふと、ウクライナにはどんな桜があるか調べてみると「キエフ(キーウ)でお花見を楽しんだ」というブログなどの記述が多く見つかった。2017年、国交25周年を迎えた日本とウクライナは記念行事を開催。ウクライナ全土22都市に、日本から贈られた1800本の桜が植えられていたのだ。国立歌劇場等の見事な桜の写真を、ネット上でいくつも見ることができた◆本来なら大々的に国交30周年記念行事が行われていたはずだった昨年、日本では記念コンサート、ウクライナではキーウの日本センターで約150人が参加して記念行事を開催。「こんな時だからこそ文化行事が必要」と、尺八演奏や陶芸体験が行われた。17年の植樹当時は「桜2500キャンペーン」として2500本の植樹を目指しており、在ウクライナ大使館では「30周年には、残りの700本を植樹したい」と話し合っていたという◆花は年毎に美しく咲いてくれるが、それを取り巻く世界の情勢は日毎に変わる。花の行く先を見守るとともに、潮流の行方を注視し続けなければならない。花に託した平和への願いを果たすためにも。(里)