
「ゲゲゲの鬼太郎」等でおなじみ、日本人に楽しい妖怪達を紹介してくれた水木しげるさんの「弟子」が、40年に及ぶアシスタント人生を振り返り、知られざる水木さんの姿を完全水木タッチで描いた一冊。昨年文庫化されました。
内容 1970年代半ば、アルバイトをしながら漫画家を夢みる「ぼく」。雑誌「ガロ」の広告で、水木プロがアシスタントを常時募集していると知り、自作の漫画を添えて履歴書を送ってみた。1年ほど経ち、忘れた頃に「空きができたので、フトンと机を持ってきてください」と葉書が来る。住み込みのアシスタント生活の始まりだった。
画力には自信があったが水木先生の緻密な絵には到底及ばず、点描の際には「テンテンはそんなにバラバラに打ってはダメです。いきなり全体を仕上げようとしてはいけない。5㍉角ずつ仕上げて全体を完成させるわけです」と丁寧な指導を受ける。目が疲れると八つ目鰻のキモの油を買ってくれるなど先生は意外と優しい。いつしか漫画家志望であったことは忘れ、気が付くと40年もアシスタントをやっているのだった…。
物心ついた頃から家にはなぜか「ゲゲゲの鬼太郎」が備えられており、鬼太郎もいろんな妖怪も大好きでした。本書では40年にわたってアシスタントを務めた人物の目線で、南方の音楽をかけながら、「ドンドコドンドコ」と太鼓の音の中で鼻息も荒く汗を流し、メガネもずれたまま必死の形相で原稿に向かう水木さんの描きぶりを至近距離から迫力満点に再現。自分のことを「水木サン」と呼び、ビデオカメラを「ぼく」に渡して「アンタ、操作に慣れたらそれを水木サンに教えるんですわ」と独特の口調で命じる水木先生は、とぼけた味わいで愛敬たっぷり。
水木先生の一番弟子荒俣宏、二番弟子京極夏彦も登場。荒俣氏がモデルの「アリャマタコリャマタ」というキャラクターができたことなども紹介され、水木ワールドファンには実に楽しい一冊です。(里)


