この作品は伊坂幸太郎の呼びかけで集まった朝井リョウ、天野純希、乾ルカ、大森兄弟、澤田瞳子、薬丸岳、吉田篤弘の8人の作家が共通ルールを決めて歴史物語を紡ぐ〈螺旋(らせん)プロジェクト〉というコラボ企画で生まれました。原始から未来までの物語をそれぞれの作家が時代ごとに担当しています。朝井氏が担当したのは平成の時代。平成後期の若者たちの心の揺らぎを繊細に描くところは朝井ワールド全開です。

 物語は繰り返す日常をもてあます看護師、白井友里子の視点から始まります。彼女の病院には植物状態のまま眠る南水智也が入院していて、〝親友〟の堀北雄介が毎日看病にやってきます。彼は智也の看病を「生きがい」とまで言うのです。雄介は目立ちたがり屋で、承認欲求が強いタイプ、智也は冷静で穏やか、誰からも受け入れられやすいタイプ。正反対の2人ですが、小学校からの幼ななじみで青春時代を共に生きてきました。物語は2人のこれまでを軸に、他人の視点で描かれていきます。そして最後は智也の視点へ…。

 雄介は平成の若者にありがちなキャラクターです。競争意識が排除されたゆとり教育で育ったせいか、自分のオンリーワンの存在価値をなんとか見いだそうと頑張るも、どこか空回っている感。俗にいう「ちょっとイタイ奴」。朝井氏も同じ時代を生きているからこそ、そのリアルさが刺さります。自立した智也のキャラクターなら、雄介と徐々に距離を置いていってもいいはずなのですが、なぜ2人は〝親友〟を続けているのか。「生きがい」とは一体どういうことか。最後まで目が離せない展開。

 〈螺旋プロジェクト〉は出自の違う海族―山族の対立を描くことなどがルールとなっているようです。雄介と智也の関係がそれになるのですが、現代の若者像と重ねて海族山族を表現しているところは朝井氏ならでは。心をえぐられる読後感に今回もやられました。(鞘)