
社会保険労務士を主人公にしたお仕事小説「社労士のヒナコ」シリーズの第3巻。主人公の朝倉雛子は大学新卒の時、就活に失敗。派遣社員として仕事を渡り歩くうちに社労士の資格があることを知り、合格率1割以下といわれる国家資格の難関を3回目の挑戦にして突破、社労士事務所に勤めます。今作は社労士4年目となり、一人前になりつつあるヒナコの仕事への向き合い方にも少しずつ変化が。コロナ禍で労働環境も目まぐるしく変わるなか、雇用主である会社側、労働者である従業員との関係性や働き方のあり方も多様化。時代背景もしっかり捉えられており、社会に揉まれる主人公の成長も感じられます。シリーズは短編集で、さまざまな背景を抱えたクライアントが登場。ここでは本作の中から「副業はユーチューバー」を少しご紹介。
あらすじ ヒナコが担当する文具メーカーで、社員と思われる人物が覆面をかぶって「社畜男メシのワークアウト」というユーチューブチャンネルを開設していた。会社はリモートワークを導入しているが、その人物は就業中と申告している時間で動画配信をしていたという告発文が何者かから送られてきた。チャンネルは登録者数が1万人を超えており、広告収入も発生している。調査の結果、覆面ユーチューバーの特定はでき、本人もあっさり認めたが、就業規則には「許可なくほかの会社等の業務に従事しないこと」と曖昧にしか記されておらず、会社側とユーチューバーの認識の差が浮き彫りに。結局、休日のみの活動という条件付きで副業が認められるようになったのだった――。
現実の会社でも起こりそうな身近なテーマを扱っているためか、社労士的な視点はあまり感じられなく、単純に物語として楽しめます。主人公ヒナコの今後の展開もシリーズで描かれていくようです。いずれ独立し雇用主となる立場となるかもしれません。初心の頃の正義はどうか忘れてほしくないと思います。 (鞘)


