
直木賞作家、道尾秀介の近作をご紹介します阿部寛主演で映画化もされた「カラスの親指」の続編に当たります。
物語 いろいろとわけあって詐欺を生業としていた「タケ」こと武沢竹夫。今はかつての稼業から足を洗い、生来の口のうまさを生かして、実演販売員として地道に働いている。ある現場で、仕事の邪魔をした「ワケあり」の中学生キョウから奇妙な依頼を受けた。「実演販売を教えてほしいんです」。「発掘! 天才キッズ」という人気テレビ番組に出たいのだという。どうしてもお金が入用なので優勝賞金をかせぎたいのだ、と。
彼女の「ワケ」、残酷な詐欺の被害者となった母親の話を聞き、かつてその母親と会っていた記憶もよみがえらせた武沢は、ペテンの世界へ戻ることを決意する。かつての仲間―やひろとまひろの姉妹、やひろの夫の貫太郎、息子のテツ―が集まり、テレビスタッフやタレントも巻き込んで、キョウの復讐劇は幕を開ける…。
「コン・ゲーム」という、小説や映画の一ジャンルがあります。策略によるだまし合いを楽しむ、痛快な犯罪サスペンスで、古くは「スティング」「百万ドルを取り返せ!」などの名作がつくられました。近年のものでは中井貴一主演の「嘘八百」など。本書の前作「カラスの親指」も、クライムノベルでありながら痛快さとハートウォーミングな読後感を兼ね備えた、見事なコンゲーム物でした。
本書もそれを踏襲しています。次から次へと、幕が一枚ずつ落ちていくように事件の新たな様相が見えてくるのがこの手の小説の醍醐味。キャラが立っていて、独自にキャストを考えながら読むのも面白いかもしれません。
現実の世界では、救いようのない詐欺・強盗事件が報道を賑わせています。現実とはまったく無縁のものとして「コンゲーム」を無心に楽しめる、平穏な世の中であってほしいものですが。(里)


