
今回紹介するのは、阿津川辰海の館四重奏シリーズで、「紅蓮館の殺人」に続く「蒼海館の殺人」。
主人公の田所たちは、前作「紅蓮館の殺人」で、探偵であることの意味と自らの正義を見失って家に引きこもってしまった葛城輝義を見舞うため、山奥にある葛城家の本宅「蒼海館」を訪ねる。蒼海館では2カ月前に亡くなった輝義の祖父惣太郎の精進落としのため、多くの親族らが集まっていた。葛城が「嘘つきの一族」と呼ぶ、葛城家の面々と食卓を囲む田所たち。出来過ぎたホームドラマのように進む食事会だったが、認知症の祖母ノブ子が惣太郎の女遊びに関するグチをこぼしたり、「惣太郎は殺された」と発言する者が現れたり、また惣太郎殺害の決定的証拠データを奪われそうになったという者も。楽しい食卓は一転した。その後、大雨の影響で葛城宅にとどまることになった田所たちだったが、激しい雨が降り続く中、連続殺人の幕が上がる。全く事件を推理しようとしなかった葛城も迫りくる危機の中、他者の命を救うため自分の力を使わざるを得なくなり、探偵として立ち上がる。大雨により氾濫した川が押し寄せるなか、葛城、田所たちは館が水没するまでに犯人を見つけ出すことができるのか!?
「紅蓮館の殺人」が山火事によるクローズドサークルだったのに対し、「蒼海館の殺人」は洪水によるタイムリミットものとなっている。一見和やかな葛城家のなかで、誰が何の嘘をついているのかが、この作品の鍵となる。また多くの伏線が張り巡らされているところは「紅蓮館の殺人」のそれを上回っているように感じる。複雑に張り巡らされた罠にトリック、二転三転する真相に最後まで気が抜けず一気に読み進めてしまいます。ネットでは「紅蓮館の殺人」を上回ると高い評価を受けています。本作だけでも十分楽しめますが、個人的には先に「紅蓮館の殺人」を読むことをおすすめします。(城)


