
老舗鉄道趣味誌「鉄道ジャーナル」の姉妹誌として創刊し、多くの鉄道旅愛好家に愛されている雑誌「旅と鉄道」の編集部が全国のJRの主要路線を紹介。10巻のシリーズが刊行されています。鉄道に乗って旅行の過程そのものを楽しむがコンセプトの雑誌とあり、路線を走る車両の絶景写真が満載で、写真を眺めるだけでも十分楽しめます。
近畿圏はJRと大手私鉄4社が乱立する鉄道激戦区ではありますが、京阪神の都市部を離れると自然豊かなローカル線も数多く存在。兵庫県加古川市を走る加古川線や姫路市から朝来(あさご)市を結ぶ播但線などが登場します。きのくに線もその一つですが、他のシリーズで紹介されています。
また、関西人にはなじみ薄い山陰地方のローカル線も登場。山陰本線は山間を走りトンネルも非常に多いので非電化路線がほとんどで、今なお気動車車両が活躍。国鉄時代の懐かしい車両が現役で走っています。
ローカル線は時代の変化による乗客数の著しい減少で、厳しい経営状況に直面。昨年JR西日本が赤字ローカル線の収支を公表したことも大きな話題となり、地域全体でローカル線の利活用をどうするか協議していかなければならない段階になりました。特に島根県松江市の宍道(しんじ)から広島県庄原市の備後落合を結ぶ木次(きすき)線は、100円の収入を得るのに必要な費用を示す「営業係数」でワースト2位の区間を擁しています。本書によると国鉄の民営化の際にも廃線が検討されていたそうで、1984年当時「沿線道路が未整備である」という理由で廃線は免れたと紹介されています。
このように、本書では各路線の歴史や見どころ、沿線の情報が満載です。旅のお供の知識としても楽しめ、車両紹介のページもあり、鉄道知識も蓄えられます。(鞘)