2011年の東日本大震災を契機に、さまざまなメディアで若者の地方移住やそのライフスタイルについての紹介を目にする機会が多くなったような気がします。愛着ある自分の地元に貢献したいと働く人、自分らしい生き方を求めて新天地の田舎で道を切り拓く人。目的はさまざまですが、これまでの大企業志向や、終身雇用・年功序列社会の時代は徐々に崩壊し、若者が柔軟に生きる働き方がクローズアップされています。この本はそのようなムーヴメントが盛んになった2016年に刊行されました。地域をベースに活動し、生業(なりわい)を立てる全国の当時20代後半から30代の世代の人たちが登場しています。

 なかには和歌山県の事例もあり、新宮市熊野川町にある本が読めるカフェ「book cafe kuju(ブックカフェクジュウ)」を運営する人が登場。なぜそこでなりわいを営もうとしたのかや、東日本大震災と同じ年に発生した紀伊半島大水害で被害に遭った取り壊し予定の廃校校舎を再生するまでのエピソードが紹介されています。(現地に行こうとされる方は現在の営業について事前に確認することをおすすめします。)

 地域の課題を解決しようと立ち上がり、それを自己実現の場所にまでするには、並大抵の努力では難しいと思います。この本に登場する人たちは自分ひとりの力だけでなく、活動に共感し、共に汗を流してもらえる人を見つけたり、時には行政の支援や助成金を上手く使いながら進めているなという印象です。若い世代だからこそ、周りの住民の意見を柔軟に聞き入れ、素直に行動できることが強みなのかなとも思います。田舎で頑張っている若者を応援しようという地域の姿勢もあると思います。まちづくりの手法的なことも書かれており、これからの働き方のヒントがたくさん詰まっている本です。(鞘)