
31日の大みそかは各地の寺院で除夜の鐘突きが行われ、御坊市薗の源行寺(湯川憲治住職)では、「平和の鐘」と呼ばれる釣り鐘が年をまたいで荘厳な音を響かせる。同寺は昭和の戦争中に米軍の空襲で本堂などが倒壊したが、釣り鐘は軍に供出していたため被害を受けず、戦後になって戻ってきた。ロシアのウクライナ侵攻が続く中、戦いのない平和な年を願って、多くの除夜会(お勤めと鐘突き)への参加を呼びかけている。
1945年(昭和20)6月7日、米軍の空襲で源行寺に爆弾が投下された。本堂、庫裡(くり)、鐘楼(しょうろう)など全てが全壊したほか、防空壕に逃げ込んでいた湯川憲文住職の妻すま子さん(当時33)、長女加寿子さん(国民学校初等科2年)、長男崇憲君(5)、次男洋君(3)の4人が死亡。ほか、警防団の男性2人、寺の前の美容師の女性ら7人も亡くなった。
当時、武器生産の鉄不足を補うため国家総動員法に基づく金属類回収で供出され、寺には釣り鐘はなかった。この年の8月に終戦、釣り鐘は武器として溶かされることなく無事に戻ってきた。
寺は53年(昭和28)に再建されたが、鐘楼は建設されず、釣り鐘はビニールシートをかぶせて保管されていた。95年12月に総代らが古いコンクリートの電柱3本でやぐらを組み、ジャッキで吊り上げて釣り鐘を設置し、戦後初めて除夜の鐘が行われた。20年前の02年に現在の鐘楼が再建された。
今年も午後11時半から本堂で除夜会のお勤めの後、11時45分ごろから平和な年を願って除夜の鐘が鳴り響く。誰でも参加でき、鐘を突くことができる。
湯川住職(68)は「ロシアがウクライナに侵攻し、多くの命が奪われているいま、あらためて平和の尊さを感じます。いかなる理由があっても、武力によって人をあやめる戦争を起こしてはならない。それが戦災を受けた寺の願いです」と、戦いのない世界を願う。


