射点に設けられたパッド・サービス・タワー㊧

 スペースワン株式会社(東京都)は22日、串本町田原地区に整備した日本初の民間小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」を報道関係者に公開した。

 同社は、キヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行の4社が出資し、2018年7月に発足。19年3月に串本町を発射場予定地に決定し、スペースポート紀伊は21年度に工事が完成した。

 来年2月末には専用ロケット初号機「カイロス」を打ち上げる予定。名称は、紀伊などの頭文字を取り、ギリシア神話の時間神の名前を採用。全長18㍍、重さ23㌧、機体の外径1・4㍍の3段式固体燃料ロケットで、標準的な人工衛星の軌道である太陽同期軌道に高度500㌔で打ち上げる場合、重さ150㌔までの小型人工衛星を積み込むことができる。

 公開されたのは、総合指令棟内の管制室と衛星組立室、約2㌔離れた山上にある射点。管制室は、発射から衛星を分離するまでロケットのデータを確認しながら制御する場所で、大小のモニターと、技術責任者らが座る席が約10席ある。射点には、ロケットのパーツを運び込み保管する建物と、パッド・サービス・タワー(PST)がある。PSTは移動式で、ロケットの各段を連結する際の作業の足場となり、発射の際はロケットから離される。

 同社企画・営業・渉外本部の鈴木茂裕部長は「小型人工衛星の需要は高まっており、今後はさらに増える。まず初号機を成功させ、お客さまや地域の期待に応えたい」と話し、2月末の発射予定に向けて「これからが最も大変なところで、いくつも山場がある。一つひとつの作業を乗り越えてやっていきたい」と気を引き締めた。