
1980年代初頭に起こったマンザイブームが終わり、低迷したテレビバラエティ界が再び青春時代を迎えたのが1989年。その視点に立ち、お笑い界の変遷を青春群像記として描く現代文化論。ことし10月に出たばかりです。
内容 2014年3月31日、フジテレビの生放送番組「笑っていいとも! グランドフィナーレ」の画面に、「長いわ!」と言いながらダウンタウン浜田雅功が相方の松本人志、盟友のウッチャンナンチャンとともに乱入してきた。スタジオでは、タモリと明石家さんまが30分にわたるロングトークを繰り広げていたところ。浜田はさんまの口にガムテープを張り、ウッチャンナンチャンはタモリと思い出話を始める。と、松本が唐突に「とんねるずが来たらネットが荒れるから!」と発言。5分もしないうちに、とんねるず石橋貴明と木梨憲武が颯爽とスタジオ登場。「荒れろ、荒れろ!」と、松本との不仲が定説となっていた爆笑問題太田光と田中裕二も乱入。ナインティナイン、SMAP中居正広、笑福亭鶴瓶らも勢ぞろい。ありえないとされていた組み合わせが実現したその光景は、「フジテレビの最終回」とも表現された。
さかのぼること四半世紀、1989年。やはり一つの時代をつくったとされるバラエティ番組が終焉を迎えていた。それはマンザイブームを受けて始まり、ビートたけし、明石家さんまの人気を確立した「オレたちひょうきん族」(フジテレビ系)だった…。
昭和から平成に移った1989年、それは私にとっても特別な年。1月に深夜番組「働けダウンタウン」(毎日放送)でひっくり返って笑ってから「なんだかただものではない」とファンになり、見れば見るほど「ただものでなさ」に引き付けられて大ファンになっていったのでした。2人が東京進出して天下取りを果たしていくのをリアルタイムで見守るのは実にスリリングで楽しかった。お笑いの歴史を勉強しなければと小林信彦著「日本の喜劇人」を熟読。東京で就職した友人に関東ローカルの「ガキの使いやあらへんで!」を録画してもらい、こちらはMBSラジオ「ヤングタウン」をテープに録って送っていました。
本書は「日本の喜劇人」以後の歴史を補完するような内容で、マンザイブーム、ひょうきん族、土8戦争(ドリフ、欽ドン、ひょうきん族)、とんねるず、第3世代、日テレの逆襲、BIG3と、80年代以降のお笑いの歴史がこれ1冊でよく分かる。それも事実を羅列するのではなく、一つ一つのコンビやグループ、現象について背景を勘案しながら立体的に述べられていくので、「日本のお笑い」を描く大河ドラマのよう。何よりも、1989年に11歳の「テレビっ子」だった著者自身の体験が土台にあり、評論家が冷静に社会現象を俯瞰する視点とは一味違う、お笑いへの愛情が全編に満ちています。まさに「青春記」です。 (里)


