先日、御坊ライオンズクラブ主催の第10回「子ども暗唱大会」を取材しましたが、この大会でよく選ばれる題材に谷川俊太郎の詩があります。レオ・レオニ「スイミー」もよく選ばれますが、これも谷川氏の訳によるものです。谷川氏の詩と、写真家・丹地保堯氏の作品のコラボレーション的な本を買ったことがあったのを思い出して、読み返してみました。

 内容 一面の雪、そして立ち並ぶ裸樹。「雪晴れ」という言葉がふさわしい空と雪の風景の中で一本だけ立つ木。雪をかぶった針葉樹林。夕暮れの色づく空を背景に枝を伸ばす木のシルエット。霧のベールの向こうから透けて見える木々。「木」のさまざまな表情が、写真家のレンズ越しに捉えられ、読者の前に示される。

 半分ばかり過ぎたところから、「二十行の木」と題する詩人と写真家との「デュエット」が始まる。

 見開きページの右側には木の写真、左側には詩人の一行詩による木のスケッチ。。木のさまざまな姿と、木に寄せる言葉が響きあう。

 枝々は明るく日光を照り返し、幹の半ばから下は闇。そんな写真に、「影のうちにこそあるいのちの発熱」との一行が寄せられる。東山魁夷の風景画を思わせる黄葉の森には、「他と似るのを少しも恐れずに身を寄せあい」。深い緑、鮮やかな緑のグラデーションを描く杉林には、「名づけ得ぬ緑の諧調を目は喜んでたどる」。東京への修学旅行からの帰路、電車の窓から見ていると、大阪から和歌山に入った辺りから、目に映る緑が荒々しさを増していくのに気づき見とれていたことを思い出しました。山の斜面を埋め尽くす森に、「決して扇動のきかぬ静かな群衆」。輝く樹氷の林に、「もうそれ以上美しくなってはいけない」。

 実に多彩な詩の世界を繰り広げている谷川氏ですが、この20行にある緊迫感とみずみずしさは、丹地氏の捉えた木々の姿との間に美しい平衡をつくっています。天野祐吉さんの解説もまたいいです。(里)