今年9月、認定こども園の通園バス内に3歳の女の子が置き去りにされ、熱中症で死亡するという痛ましい事件が起きた静岡県で、またもとんでもない事件が明るみになった。30代の女性保育士3人が1歳児に対して暴行、暴言を繰り返していた。
裾野市の発表によると、3人は合わせて15の不適切な行為を認めており、いずれも市の聞き取り調査に対して「しつけのつもりだった」と釈明したというが、どれもこれも明らかな暴行、暴言であり、だれがどうみても虐待ととらえるのが普通の感覚であろう。
園児の足をつかんで宙づりにする▽宙づりにしたあと真っ暗な部屋に放置する▽カッターを見せて脅す▽にらみつけて声を荒げ、無理やりズボンを下ろす▽泣いている姿を撮影する――など。何が面白いのか、昼寝で眠った園児には何度も「ご臨終です」という言葉をかけていた。
軽い気持ちだったのかもしれないが、幼い子どもが受けた痛み、恐怖は将来にわたる心の傷となりかねない。これほどいくつもの陰険、危険な行為を見咎められることもなく、長期間繰り返していた事実一つをみても、園全体の問題、責任が厳しく問われなければならない。
中高生に将来の夢を聞くと、「保育園の保育士さん」との答えはいまもランキングの上位に入る。理由はほぼ全員が「子どもが好き」であり、今回の3人も子どものころ、一緒に楽しくうたい、遊んでくれた「あんな保育士さんになりたい」と思ったのではないのか。
何よりも看過できないのは園が全職員に事実を口外しないよう誓約書に署名させ、かん口令を敷いていたという話。園長は毎日何をし、何を見ていたのか。トップが寄りつかない組織は現場から腐り始める。(静)