厚生労働省は介護保険制度の要介護1、2の介護サービスについて、国の介護保険から外し、市町村の介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)に移管することを検討している。右肩上がりの介護費を抑え、保険料など現役世代の負担を軽くするのが主な目的だが、自治体や関係者からは「サービスの低下につながる」との声が上がっている。厚労省は今年度中に結論をまとめ、2024年度からの見直しを目指している。

 介護保険は「要支援1、2」から「要介護1~5」まで7段階に分類。介護保険サービスは基本的に利用者負担が1割で、国が9割を負担する。所得によって2割負担、3割負担もある。

 今回の見直しで対象となっているのは要介護1、2。日常生活を送る上で介護が必要な状態の人で、要介護の中では軽度とされる。現状は訪問介護や通所介護のサービスを受ける際、介護福祉士らが全国一律の運営基準で提供するサービスを利用しているが、厚労省はこれを国の介護保険から外して国からの補助を受けながら市町村が総合事業で対応するという案を検討。各市町村が運営基準や報酬を独自に決めることができるが、それぞれの福祉理念や財政状況等からサービス内容に差が出たり、サービスの質の低下につながる恐れがある。全国老人福祉施設協議会など関係8団体は、「目的や対象の異なる市町村の総合事業に移管することで自立を阻害し、重度化を招く恐れがある」などと強く反対している。

 日高地方の自治体からも「適切なサービスで重度化を防ぐことが難しくなる恐れがある。サービスの内容も各市町村が独自に決めるため、従来と同等のサービスを提供できないことも懸念される」という声が聞かれる。