今年7月に凶弾に倒れた安倍晋三元首相の国葬が執り行われた。賛否が大きく分かれた開催だったが、菅義偉前首相の友人代表の弔辞に「心を打たれた」と反対派の人も含めSNS上で話題になり、国葬断行のイメージ回復に一役買っている。
テレビ番組で国葬の話題が取り上げられる中、元国会議員の杉村太蔵さんが話したエピソードに小さな衝撃を受けた。話題はいわゆる「アベノマスク」。新型コロナが流行し全国的にマスク不足に陥った2020年2月ごろ、国民の不安解消のため繰り返し使える布マスクの全戸配布を経済産業省出身秘書官が安倍氏に提案したのが発端。施策は、マスクに遺物混入や配送完了の遅延、サイズの小ささ、さらに在庫保管費用等の問題があり批判が大きかった。実はこの裏側で起こっていたのがマスクの買い占め。このとき、日本には十分な量のマスクが輸入されていたが価格高騰を見越し、買い占められ流通が制限されていた。これが、4月1日に布マスクの配布を発表したことで、マスク需要の低減が起こると判断され、流通量の増加につながったという。実際、布マスクが届く前に一時高騰していた価格も落ち着き、使い捨てマスクを購入することができていた。
杉村さんは、どれだけ批判を浴びても秘書官を責めることのなかった安倍氏の人柄に触れていたが、私の衝撃は税金の無駄使いとしか思っていなかったアベノマスクが、流通に大きな好影響を与えていたこと。要人の発言や国の施策が株価や為替など経済に影響を与えることは分かっていたのに、批判的視点しか持てなかったことが恥ずかしい。記者としても、一つの側面にとらわれることなく、広い視野を持つ必要がある。(陽)


