南陵高校で記者の質問に答える井植理事長

 教職員の給与未払いなどさまざまな問題が明らかとなった和歌山南陵高校(日高川町)を運営する学校法人南陵学園(静岡県)の新しい理事長となった井植浩之氏(57)が27日、就任して初めて同校を訪れ、一部の教諭や生徒にあいさつした。学園の運営が厳しい状況のまま事業を引き継いだ井植理事長は、生徒が安心して学べる環境づくりへ、聖域のない改革で学校運営を健全化していく決意を示した。

 同校を巡っては、今年3月から5月にかけて、国の就学支援金の保護者への返還遅れ、料金未納で寮へのガス供給停止、私学共済掛け金滞納などトラブルが顕在化。7月には静岡県が経営改善を求める措置命令を出していた。こうした中、8月下旬には井植氏が新しい理事長に就任し、事業を継承した。

 井植理事長は三洋電機の創業者一族で、現在もコンサルティング会社の経営や予備校の理事を務めている。一日も早く教職員や生徒にあいさつしたいと、この日の来校となった。

 集まった教職員約10人の前で井植理事長は「生徒が安心して健全に学んでもらえる環境づくりへ、風通しよく教職員や保護者の皆さんの意見を聞きながら、聖域のない改革で運営を健全化していきたい。優先順位をつけて改善すべきところからやっていきたい」と抱負を述べた。

 理事長を引き受けた理由については、数年前から学園が厳しい状況であると聞いていたとし、「教職員や生徒のために力を注げるならと、純粋な気持ちで引き受けた。県の指導にも適切に対応していく」と説明。さまざまな未払い金は迅速に改善していくとした。

 今後、どのような学校を目指すかには「部活動を通じたスポーツ振興や、通信制教育の機能を十分生かし、新しいカリキュラムも取り入れてここでしか学べない、必要とされる学校を目指したい。保護者からは部活動の指導体制強化の要請もいただいているので、応えられるよう検討したい」と方針を示した。9月中に開くとしていた説明会は、「10月中には開催したい」と明かした。

 8月下旬に保護者向けに出された文書は「内容はあとから知った」と配布時の詳しい内容は知らなかったとし、文書には前理事長の小野和利氏が学園長として残ると記載されていたが、「現在も理事ではあるが、学園長や新しい肩書は考えていない」と今後、学校運営には関与しない方針であることを示した。