熊野古道の姉妹道、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼道を女流俳人が40日かけて踏破した、その記録と俳句集です。「スペイン『奥の細道』」と副題がついています。

 内容 スペインの現代作家パウロ・コエーリョの小説「星の巡礼」に心を動かされ、聖地サンチャゴへ向かう巡礼の旅に出る著者。 旅立つ前に、すでに難関はあった。旅人に巡礼手帳を発行するマダム・ダブリルに、「なぜカトリック信者でもないのにこの道を巡礼するのか。詩を作りたいのなら、イタリアでもドイツでもいいところがいくらでもあるでしょう」と問い詰められる。著者はその問いに必死になって答え、ようやく手帳を手にする。

 リュックに旅人のお守りであるホタテ貝、日本の友人たちがくれたお守りもぶら下げて、早朝から晩までひたすら歩き続ける旅。取り立ててドラマチックなことが起こるわけではないけれど、各国の巡礼仲間たちと出会っては別れ、旅の途中でまた再会。古い巡礼の歌「ウルトレーヤ」を全員で情熱的に合唱したり、肉刺(まめ)がつぶれて炎症を起こし、熱が出て一歩も歩けなくなったり、48日間、900㌔の旅は決して平坦ではない…。

 著者に関しては、サッカーの日韓ワールドカップが開かれた2002年にNHK教育のハングル講座を毎週見ていたのですが、そのレギュラー出演者だったのをよく覚えています。「東海に白波立ててワールドカップ来る」と詠み、韓国側の出演者から「韓国では日本海を東海と呼ぶので適切でない」と指摘があってちょっとした論争になっていました。同じく2002年、南部梅林に吟行に来て「濃きも薄きも紅梅の夕まぐれ」と、枕草子を本歌取りした句を詠んでおられました

 本書は聖地巡礼を追体験できるエッセイ・俳句集。大自然の中を自分の足で歩くことは、体と宇宙を同化させてエネルギーをもらうことなのかもしれないと思わせられます。(里)